アップデートする国語  市邨発・生徒主体で切り拓く授業 【夏休み 研修編】

7月28日、本校国語科では、杉本紀子先生(筑波大学附属坂戸高等学校)を講師にお迎えし、「概念から構築する単元と国語科の役割」をテーマとした研修会を実施しました。

今回の研修では、国際バカロレア(IB)の教育実践を手がかりに、「概念(Big Idea)」を軸とした単元設計について学びました。杉本先生からは、IBにおける学習が「探究・行動・振り返り」の循環によって深められていくことや、学習内容を知識の習得だけでなく、より普遍的な概念の理解へとつなげることの重要性についてお話しいただきました。

研修後半では、本校の教育理念やI-BASを踏まえながら、「市邨の国語科ではどのような概念を大切にしていくべきか」をテーマにグループワークを実施しました。参加者はこれまでの授業実践を振り返りながら意見を出し合い、「コミュニケーション」「自己表現」「個性」「ものの見方」「言語観」「アイデンティティ」などのキーワードを整理し、本校独自の国語教育の方向性について活発な議論を行いました。

付箋や模造紙を活用した協働的な活動を通して、教員一人ひとりが国語科の学びの本質を見つめ直すとともに、生徒の主体的な学びを支えるカリキュラムづくりについて考える貴重な機会となりました。

今後も国語科では、生徒が言葉を通して自ら考え、多様な価値観と向き合いながら豊かな表現力を育むことができるよう、授業改善と研修を継続してまいります。

アップデートする国語 市邨発・生徒主体で切り拓く授業④

今回は、高校2年生・3年生の「国語表現」の授業をご紹介します。

テーマは「文化祭の企画を考えよう」。ただし、目的は文化祭の企画を決めることではありません。「建設的な話し合い方」を学ぶことを目的とした授業です。
話し合いでは、まず一人ひとりが付箋にアイデアを書き出します。その後、それらをグループで分類し、それぞれの企画の「良さ」を分析しました。そして、一つの案を多数決で選ぶのではなく、それぞれの企画の魅力を組み合わせ、「良いとこ取り」をしながら新しい企画を創り上げていきました。

この授業を通して生徒たちは、「アイデアは競わせるものではなく、組み合わせることで新しい価値が生まれる」ということを体験しました。一見すると別々に見える案でも、それぞれの長所を融合させることで、一人では思いつかなかった企画へと発展していく場面が数多く見られました。

また、生徒の振り返りでは、「多数決では、自分の案が選ばれなければ終わってしまう。しかし、この方法なら自分のアイデアの一部が企画に生かされるので、話し合いに前向きに参加できた」という声もありました。「勝ち負け」で終わる議論ではなく、お互いの考えを材料にしながらより良いものを創り上げることの価値を実感できたようです。

これからの社会では、自分の意見を主張する力だけでなく、多様な考えを受け止め、それらを生かしながら新しい価値を生み出す力が求められます。国語科では、文章を読む・書くだけではなく、「対話を通して考えを深める力」や「協働してより良い答えを創り出す力」の育成にも力を入れています。

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アップデートする国語  市邨発・生徒主体で切り拓く授業 ③

今回は高2アカデミックコース、「文学国語」の授業紹介。「リーダーズシアター」として「音読劇」に挑戦しました。

手順は以下のとおり。

①グループごとに作品を選択する→1.夏目漱石「夢十夜」(第一夜)、2.森鷗外「高瀬舟」、3.芥川龍之介「魔術」、4.宮沢賢治「注文の多い料理店」、5.サン=テグジュペリ「星の王子さま」

②脚本を作り、配役(ナレーター含め)を決定する。

③演出(ポスター、BGM)を作成する。

④グループごとに発表する

では、ここから何が学べるのか、教室で何が起こっていたかを要約すると次のようになります。


「脚本を作る」ためには作品を「理解」する必要がある。その各自の「理解」は、一つの劇を創りあげるためにメンバーで「共有」される必要がある。「共有」されるためには「なぜそう読めるか?」の部分が言語化される必要がある。その過程で自身の「読み」が揺さぶられ、「変化」する。その「変化」が共有されることで作品は「自分たちのもの」に形を変えていく。また、音声で伝える表現を追究することで、「文字による表現」で何が実現されたかを再認識する。

きわめて「文学的」なキーワードが並ぶことに気づきます。

「国語」の授業は≪作者→(学者・教師)→読者≫の構図のなかで「こうあるべき・こう読まれるべき」という「文学の正解」が前提とされすぎていたように思います。そこに「ほかならない私」が入る隙間はほとんどありません。でも、このワークは≪作品―読者≫が前景にきて、それを「他者(自分以外の人)」と共有するという複線的な「拡がり」が期待されるもので、実際に生徒たちは教室でそれを体験しました。

生徒のふり返りは、そのことをはっきり語っていました。

◆脚本を作り読み進めていくときに、それぞれの受け取り方の違いや小さなズレについて話し合い様々な角度の視点から、解釈が深まったり変わったりした。

◆多様な表現に変換し共有するというプロセスを経る前は、よくある物語だな、という見方をしていた。しかし、このプロセスを経たことで音や視覚、声を用いても情景を伝えることはとても難しいことだと理解をし、文字だけで容易に情景が伝わってくる宮沢賢治の偉大さに気がついた。

◆私の中で「高瀬舟」は、ただの「兄弟愛」だけを描いた作品であると思っていた。しかし、リーダーズシアターを通して、読み手に対して「何を罪にするのか」と聞いているようにも感じられた。このように「罪」の基準というものを読み手に考えさせることで「本当の正しさ」というものが作られていくのだと思った。

 

たとえば、『星の王子さま』の本文は「『かんじんなことは、目には見えない。』と、王子さまは、忘れないように繰り返しました。」ですが、脚本は「『かんじんなことは、目には見えない……。かんじんなことは……、目には見えない』と抑揚と間を効果的に使って実際に「繰り返し」て読み、本文では「行間」であったニュアンスが臨場感をもって再構築されました。

また、『注文の多い料理店』では、いわゆる「現実」に戻った紳士二人のその後が描かれるのですが、山猫の親分が覗く場面の直後に「……果たして、この二人の紳士がどうなったのか、それを知る者は、もう、誰もいません。」と、あえて「現実」に戻さずに物語の「ホラー性」を前景に解釈できる可能性を示しました。

「文学」をどのように受け取って、自分のものにしていくか。その意味で意義の深いチャレンジだったと思います。

アップデートする国語 市邨発・生徒主体で切り拓く授業①

アップデートする国語 市邨発・生徒主体で切り拓く授業②

アップデートする国語  市邨発・生徒主体で切り拓く授業 ②

本校では新カリキュラムの実施から5年目を迎え、これまでの取り組みの成果と課題を見据えながら、さらなる授業の質の向上に取り組んでいます。国語科においても、これまで積み重ねてきた実践をもとに、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた工夫を重ねてきました。今月は、その中でも特に生徒の学びを深めることにつながった実践や、新たな試みについてご紹介いたします。

本校は「エクスプローラーコース」「アカデミックコース」「ブライトコース」「キャリアデザインコース」の4つのコースに分かれていますが、1年生は全コース共通のカリキュラムのもと、「現代の国語」の授業に取り組んでいます。

今回は「ふしぎと人生」という単元における取り組みをご紹介いたします。

外的な現象と人間の心の中に生じることが一つになることで「物語」が生まれ、その物語が「神話」へと発展し、人間の存在自体に関わるものとして人間の存在を深め豊かにしてきた。「自然科学」が「神話」の矛盾を指摘し、神話に取って代わった現代であっても、子どもの世界は「ふしぎ」にあふれ、日々「物語」が生まれている。

こうした教科書本文の内容を踏まえ、生徒たちは子どもの抱く「ふしぎ」に応える物語を考え、絵本の創作に取り組みました。中にはAIを駆使して自分が考えた物語の内容に合わせたイラストを創作する生徒もいました。